山梨百名山をついに達成 
南アの隠れた名峰・黒河内岳(笹山)
 山梨百名山を残すところ一座となった2021年に吉ちゃんから「笹山に登る気がありますか」の連絡を受け計画書を作成して勉ちゃん・仁さんも賛同してくれたが2020年から心房細動と診断されて登りは息が苦しくなる状態が続いていたので、装備・食料・水等を全面的なサポートしてもらったにしても足手纏いになることは必至なので、まあ100分の1を残すこともありだなー断念することにした。

 しかし未練が湧いてきて2022年の秋から単独で登るため試行錯誤しながら計画を練ってきた。ネットでは日帰りが大半だがこれは絶対無理で、早朝出発して日没前に下山だがヘッデンを点けて歩きたくない、大門沢小屋前泊コースも行動時間が長いので駄目だ。山頂一泊予定で実行に移すことにした。

 トレーニングとして房総の山を精力的に歩き、7月には富士山に二回。

この時の標高差1300mを約6時間から休憩時間含みで1時間200mの高度を登る数値を導き出し、笹山標高差1900m9時間30分。下りは1時間350mで行動時間は5時間30分として、装備はツエルトのみでシュラフなし・飲料水3g・食料はストーブはなしで行動食のみを絞り込んでもザック重量は8sとなった。

 女房からは無理なんで中止したら、仲間に声掛けしたら、駄目とわかったら即引き返してと言われ続けてきた。

 実行日は単独の優位性を生かして八月下旬になって山の天気予報のAランクをにらみ続けて実行日を決めた。

なお、山岳保険連絡先も計画書に記入し、山梨県警にメールで送付した。

 期日  2023年8月30日〜31日   晴晴
 8月29日  君津IC10:40=双葉JCT=中富IC14:30=奈良田湖15:30
 8月30日  奈良田湖(820)5:00…送水管上5:45…尾根合流点(1344)7:00…水場入口(1603)…窪地(2256)11:25…南峰(271714:10/14:30…北峰(243314:45  <行動時間:南峰まで9時間10
 8月31日   北峰4:30…南峰4:40/5:25…窪地7:15…水場入口9:20…尾根合流点10:30…送水管上12:00…奈良田湖14:35<行動時間:南峰から9時間10
 奈良田?16:30=中富IC17:30=道の駅富士川(仮眠)=君津IC21:10
 
 記録   車は軽自動車で時速100qになると「スピードに注意ください」中央車線や路側線を踏むとブザーが注意を促してくれる老人向けの車仕様となっていて助かります。

 奈良田湖駐車場着くと車が20台近く停まっていてみんな笹山かと思ったが。釣人と広河原に向かう登山者だと分かった。登山口まで歩いて偵察を行って車中泊とします。蒸し暑かった車内も次第に冷え込んできて足元が寒くなってきて、我が家の庭から見上げる星空は夏の三角形と白鳥座にカシオペア位ですが、ちりばめられて星空は星座なんか確認もできません。5:00近くになって明るくなってきたので出発します。

 吊橋を渡って登山口の標識を過ぎると杉林の中の鉄パイプの手摺に導かれて送水管上に、これから本格的な山道に入り尾根合流点まで標高差524m2時間40分の予定だったのが2時間ジャストと順調な滑り出しです。

若者二人から抜かれて、彼らは笹山から広河内岳を越えて大門沢を下るそうです。

樹林帯の中なので陽射しは遮られていて水場入口でも予定より40分短縮、窪地2256mでは30分短縮とだんだん余裕がなくなっているのが自分でもわかります。 とにかく急坂の連続で足元のみを見つめながら、時折アキノキリンソウ・ゴゼンタイバナ・カニコウモリソウ・オタカラソウ等の花が目につきます。振り返ると富士山が樹幹から覗いていて奥に見えてくるのは南峰でしょうか。

 南峰の標識が建つ広場にひょっこりと。ついに自分の足で自力で立つことができ「山梨百名山達成」ですが特に感情が湧くことが無いのは疲れの性でしょうか。

 仲間にラインで送って驚かせているのが嬉しいです。

北峰に立つと南アルプスの山々が流れる雲の中に見え隠れして圧巻の展望を繰り広げてくれていて、マップを出して一座一座山座同定を始めます。

 目の前に塩見岳・登りたかった蝙蝠岳・荒川岳・その奥に覗くのは赤石岳・聖岳・ツインピークの笊ケ岳にガスが切れると白河内岳に大籠岳に大門沢からの下降尾根、そして農鳥岳に間ノ岳北岳に恰好良いピラミダルな甲斐駒ヶ岳です。

 その右手には鳳凰三山に地藏岳のオペリスクも確認できます。

 もちろん富士山は背後に大きくそびえていて、日本最高峰三山を同時に眺められます。

 山々を眺めつくしたので今晩のネグラの設営です。軽量化目的でツエルトのみで山頂直下におストックを支柱にして何とか恰好が付いたように見えます。

 行動食に毛の生えたような簡素な食事はあまり喉を通りません。もちろんアルコールもなしです。寒くなる前に一寝入りと思って横になりますが小一時間程度で目が覚めます。

 ツエルトの下から風が容赦なく吹き込んできて、石を防風代わりに積んだりしますが効果はあまりないようです。シュラフも当然持ってきていません。

朝出発の時に車で使ったのをザックに入れようかなーと思いましたが480gを軽量化目的で止めていました。

 足に小スタッフザックを入れて大スタッフザックに両足を入れて更にザックの中に突っ込んでレスキューシートで下半身を包みます。腰から上は半袖・長袖シャツ・ウインドブレーカー・雨具は上下を着用、首にはネックウォーマーとタオルですが暖をとるものはなしです。

 寒くて寒くて、風を避けるためついに山頂から樹林帯に降りて岩に寄りかかりツエルトを被って満月を眺めながら時間経過を待つのみです。雲が出ていて星空になっていないので冷え込みは少ないはずなのに身体が手が震えてきます。ヤバいです。行動食を摂ると身体が暖かくなり小一時間程度眠れ、又行動食を摂ります。早く山を下ろうと荷物をまとめて南峰に移動して夜明けを待ちます。     

 富士山の背景の空が茜色に燃えてきて神々しく感じますが、山には朝日が当たらなく南アルプスは燃えてくれなく残念です。こんなに寒い思いをしたのにと思いますがもう一度全容をみせてくれるだけでうれしいものです。

 明るくなってきてメボソムシクイ達もお祝いの囀りを聞かせてくれて下山の途に就きます。

鳳凰三山に小川山から奥秩父連山の金峰山も見せてくれ、登るときには余裕もなかったのだなーと苦笑します。

順調に下っているようだったが足が重くなってきて水場入口では予定タイムより50分も遅れている。両足大腿筋に力が入らなくなって踏ん張りが利かなくなってきた。ガス欠かなーと思って行動食を口にすると幾分持ち直してきた。

尾根合流点を過ぎるとひどくなってきて尻餅をつく回数が増えてきて、最近の山遭難も下山時に歩けなくなったとのニュースもあり自分もそうなるかなーと考えたりした。

 送水管上まで降りてくると鉄パイプに縋りながらも遅々として足を運ぶ。杉林に中にミヤマウズラの花を数株見つけて写真を撮ったつもりだが足がふらついていたのだろう映っていなかった。

下山口から吊橋に向かって歩いていると対向車の工事関係者の人から「笹山ですか、今日の登山者は」と声を掛けられ「今日は登る人、下山者とも会うことなく苦しい一人歩きでした」と応え「ご苦労様でした」と今日唯一の人との会話でした。登りは予定通りだったが下りは予定プラス3時間40分となんと1.7倍も要していて何故だったかの原因究明と今後の対策を講じなければと思った。

とりあえず奈良田温泉に行って、しばらく静かに湯に浸った。

このまま運転するのはと思って宿に電話するも呼び出し音に全く応答しない。温泉の主は最近は予約でないと泊まれませんとこと。せちがらくなったものだ。

道の駅富士川で仮眠して無事帰宅することが出来ました。本当は宿でゆっくりと独り祝杯を挙げたいところだったのに。

まあ、いいか。山梨百名山の四天王(笊ケ岳・鋸岳・鶏冠山・笹山)を制覇したことで大満足です。

次の目標は・・